エマは昼と夜にたどり着き、鬼の頂点の「あのお方」と新しい約束を結びました。
その約束は
「食用児全員で人間の世界へ行く」
「それを最後に二世界間の行き来を完全に不可能にする」
というものでした。
また、「あのお方」との約束には3つのルールがあります。
そのルールとは、
- 約束は上書きできない
- 約束は破ることができない
- “ごほうび” は断れない
というものです。
これらを踏まえると、矛盾点というか疑問点が2つ出てきます。
疑問点1 「世界を分ける」≒「二世界間の行き来を不可能にする」
1000年前、「人間と鬼で住む世界を2つに分けてくれ」という約束がされました。
そして今回、エマは「二世界間の行き来を不可能にしてほしい」という内容を含む約束をしました。
この2つの約束、ほとんど同じ内容ではないでしょうか。
仮に人間と鬼の世界が国境のようなもので分けられていたとするならば、管理者の目を盗んで二世界間の行き来ができる可能性もあります。
この場合はエマの「二世界間の行き来を完全に不可能にする」という約束は必要なものになります。
しかし、「あのお方」は時空を操る能力を持っています。
このことを考えると、国境のようなものが引かれているような簡単なものではなく、空間的に違う次元の世界のような感じで分けられていると考えるのが妥当でしょう。
6巻 p.85では、ソンジュが「二世界間を『二度と行き来はできない』と取り決めで決められた」と言っています。
そのように考えた時、エマが「二世界間の行き来を完全に不可能にする」という約束をする意味はない上に、「約束は上書きできない」というルールにも抵触するのではないかと思ってしまいます。
疑問点2 エマの約束はイヴェルクの “ごほうび” と矛盾する
1000年前の約束は
「世界を二つに分けてほしい」
であり、それに対する “ごほうび” は
イヴェルク→「その年に実った一番良いお肉をあげること」
ラートリー→「調停役として二つの世界の平和を保つこと」
でした。
しかし、エマの約束を叶えると、鬼の世界には食用児がいなくなることになります。
そうなるとイヴェルクの約束「その年に実った一番良いお肉をあげること」が果たせなくなるのではないでしょうか。
イヴェルクが約束を破ることにもなりますし、エマが約束を上書きしたとも解釈できます。
しかし「あのお方」は「叶えてあげる」と言っていることから、この約束はルールに反しないことがわかります。
これについては解釈が複数できます。
- 研究員は残るので、そこから人肉を献上するようにしようと考えた
- 「その年に実った」なので、実らなければ無効と解釈した
- 直後にイヴェルクが殺されることを予知しており、無効と判断した
- “ごほうび” の内容によって矛盾は解消される
4つ目だった場合が問題で、例えばどういう場合が考えられるかというと
「きみのDNAをちょうだい。培養していい肉を作るから。」
のようなごほうびを求められた場合なんかが考えられます。
疑問点3 約束を破った場合どうなる?
「約束を破ってはいけない」というルールがありますが、破った場合については特に何も触れられていません。
しかし、「あのお方」と結んだ約束はこれまで誰も破ったことはなさそうですよね。
誰も破らないなんてことがあり得るでしょうか?
イヴェルクの場合は「毎年最上の肉を渡さなければ殺す」とかなら破ることもないかと思うのですが、ラートリーはもともとごほうびを告げられる際に「命を差し出してもいい」とまで言っています。
そのラートリーが、死ぬ以上に苦行ともとれる「調停役をする」という約束を、なぜ守っているのでしょうか。
この答えは、「約束は決して破れない」というのが答えなのだと考えます。
どういうことかというと、「あのお方」は時空に干渉できるということに着目します。
誰かが約束を破った時、時間を戻して破る前の状態にしてしまうのではないでしょうか。
「罰則が怖くて約束を破らない」のではなく、そもそも「約束を決して破れない」状態なのだと思います。
まとめ
今回は「あのお方」との約束についての疑問点を考察してみました。
エマの約束に関する疑問点については、もしかすると “ごほうび” にも繋がってくる内容なのかもしれませんね。
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