「ラムダ計画」の真の目的と、約ネバの最終回にもつながるような物語全体の黒幕について考察します。
「ラムダ計画」「ラムダ農園」とは
ラムダ農園とは、西の果てに建設された新しい農園です。
ラムダ農園にはノーマンやザジたち、そしてアダムもいました。
そのラムダ農園を使って行なっている計画が「ラムダ計画」なのですが、その内容ははっきりとはいまだに分かっていません。
ノーマンは「食用児の実験場」と言っていますが、具体的な内容は言っていません。
「ラムダ」の意味についてはこちらで考察をしています。
「ラムダ農場」= クローン量産施設?
ソンジュは4つの高級農園とは別に、いくつもの安価型量産農園が存在すると言っています。
ではラムダ農園もこれに該当するのかというと、そうではありません。
なぜなら、安く大量に人肉を作る安価型量産農園には、ノーマンの存在は必要ないからです。
ではラムダ農園はどういう目的で存在していて、なぜノーマンはそこに収容されたのか。
ラムダ農園は「質の良い脳を人工的に作り出すことを目的としている施設」なのではないでしょうか。
ノーマンは稀に見る天才で、最高級の脳を持っています。
そのノーマンを実験によって解析し、良質な脳を作る仕組みを確立させることができれば、質の良い脳を大量生産することができます。
そして、一番効率的なのがノーマンのクローンを作ること。
オリジナルの人間の一部を使って細胞を増殖させ、オリジナルそっくりのクローンを作り上げることができれば、あとはもう同じ過程を繰り返すだけで「フルスコアの脳」が量産できます。
ラムダ出身者であるアダムがなんとなくノーマンに似ていた(白髪とか)のも、ノーマンのクローンを作り出そうとしているのだと考えれば、納得できます。
真の目的は別にある
と、ここまで「ラムダ農場」=「クローン施設」、「ラムダ計画」=「ノーマンのような良質な脳を量産すること」という考察を述べましたが、これはミスリードで真の目的は別にあると考えています。
というのも、途中まではラムダ農園出身者がアダムしか登場していなかったため、アダムとノーマンが似ているのではないか、という考察もありましたが、現在はどうでしょうか。
ザジこそ白髪だったものの、ヴィンセント、バーバラ、シスロは全員白髪ではなく、ノーマンとは外見も性格も全く似ていません。
ということで、ノーマンのクローンを作る施設だという考察は間違っているように思えます。
鬼に対する武器を作る施設
では真の目的は何なのかというと、ラムダ農園は「鬼に対する武器を作る施設」なのではないかと思います。
「武器」といっても物ではなく、人間兵器です。
人間は基本的に鬼より弱く、特に王家の鬼などと比べると勝ち目はまずありません。
そこで、鬼にも対抗できる力を持つ人間を作り出そうとしているのが「ラムダ計画」であり、そのための施設が「ラムダ農園」なのではないでしょうか。
ただし仮に鬼より強い人間を生み出すことができたとしても、その人間が鬼と戦わなければ鬼に対抗する戦力にはなりません。
そこで、投薬によって鬼への憎しみを増幅させたのではないかと考えます。
実際にバーバラたちは、異常なまでの鬼への恨みを持っています。
また、投薬の副作用である発作が起きている場面を見てもらいたいのですが、例えばエマがムジカたちと友達だと知ったバーバラ。
鬼は絶対悪なはずなのに、人間であるエマは鬼であるムジカたちと友達だということを知ります。
そしてその直後に、ラムダでされたことを思い出して発作が起きます。
この発作というのは、「鬼が絶対悪の存在だ」ということを疑ったときに起きるのではないでしょうか。
少しでも疑うと、発作によりラムダでの投薬やひどい仕打ちを思い出させて鬼への怒りや憎しみを思い出させる。
そんな効果がラムダでの投薬と発作にあるのではないでしょうか。
ノーマンもレグラヴァリマを倒した後、エマたちに「鬼を全滅させない未来もある」と言われた際に発作を起こしています。
ラムダ農園では、鬼が絶対悪であることを疑わないように洗脳していたのではないかと思います。
発作は日に日に発生間隔が短くなっているとのことでしたが、これはいろいろな鬼たちを見たり脱獄後に外の世界を見ていくうちに、無意識に「鬼が絶対悪だとは言い切れないのではないか」という気持ちが少しずつ強くなっていたのかもしれません。
また、ラムダ農園は鬼だけでなくラートリー家も実験に加わっていましたが、ラムダ組が憎んでいたのはなぜか鬼に対してだけです。
これも投薬によって鬼を憎むように制御されていたと考えると、納得がいきます。
真の黒幕とは
では、何を目的に「鬼に対抗できる人間を作る」ことをしたのでしょうか。
鬼を全滅させることができれば、食用児は全員助かります。
しかし、他にも恩恵をうける人たちがいるのを忘れていないでしょうか。
人間と鬼の調停役を任されていた、ラートリー家です。
ラートリー家が鬼には秘密でこの計画を進めているのだと考察します。
ラートリー家は鬼と協力する立場のため直接鬼に危害を加えられることはまずないかと思いますが、危険性は常にあります。
また、子々孫々永遠に調停役をするという宿命を背負ってしまい、普通の人間の暮らしはできません。
このような状況であれば、ラートリー家の人なら「いっそ鬼が全滅してくれればいいのに」と思うのもおかしくないはず。
なぜなら、鬼が全滅したら「調停役」という役目は必要がなくなるからです。
鬼に対抗する勢力を作って鬼を全滅させるように仕向け、その結果調停役から解放されで自由を得ることをラートリー家は企んでいるのではないでしょうか。
12巻の p.166、アンドリューがシェルターを襲うシーンを見てください。
エマたちが「七つの壁」を目指していると知ると、「寧ろそれなら尚更殺さなければ」とアンドリューは告げます。
アンドリューはエマたちが「七つの壁」へ行き、食用児が人間界へ行けるよう約束を結ぶことを恐れているのです。
その理由が、「自分たちは解放されないから」。
鬼が存在している限り、たとえ自分の細胞を使ってでも、新たに農園を作ってでも鬼側の調停をしなければなりません。
ラートリー家からしたら、エマたちが約束を結ぶ方向ではなく鬼と闘う方向に仕向けなければなりません。
約束を結ばれて食用児全員が人間界へ行ってしまい、戦力がゼロになるぐらいなら、その前にエマたちをここで殺さなければ、ということです。
「約束が認められて食用児が解放されても、我々ラートリー家はここに残らなければならない」のです。
他にも、11巻の p.189(最後のページ)では、ピーター・ラートリーの「食用児はこの世界に必要なんだ」というセリフで巻が終わっています。
単純に受け取ると「鬼の世界では鬼の食料として食用児が必要なんだ」という意味ですが、「ラートリー家の世界にはこの役目から解放されるために食用児が必要なんだ」という意味に解釈することもできます。
漫画のひとつの巻の最後のセリフにするぐらいなので、何か深い意味があってもおかしくはありません。
他にも、9巻の p.40〜p.41のエマとルーカスがジェイムズ・ラートリーと電話するシーンで、ジェイムズラートリーは3つの選択肢を提示してきますよね。
- 少人数で秘密裏に人間界に逃げる
- 鬼と人間の全面戦争を引き起こす
- 七つの壁を探す
この中で、2つめの選択肢「鬼と人間の全面戦争」を強く推すような話し方をしています。
これは、ラートリー家としては鬼と食用児との全面戦争に持ち込みたいという気持ちはあるものの、ジェイムズは罪悪感もあるため「七つの壁」の選択肢も示したのだと考えるとすっきりするのではないでしょうか。
まとめ
ラムダ農園、ラムダ計画の真の目的と、物語の真の黒幕について考察しました。
ラートリー家はかなりの重要人物であるにも関わらず、途中からほとんど登場していませんよね。
一度ラートリー家の存在を忘れさせておいて、読者が忘れた頃に真の黒幕として登場させるのかもしれません。
コメント
凄